研究室の概要

はじめに

人は,海岸あるいは海辺から多くの恵みを享受してきました.その反面,高波・高潮,津波による災害も被ってきました.我が国の地勢上,臨海部低平地に人口と富が集積せざるを得ないため,海の脅威から人や生活を護るための学問として海岸工学が発展してきました.その一方で,防護のための整備が海岸の利用を阻害し,生物・生態系を含む海岸の環境を悪化させる事態を招いています.1999年には海岸法が41年ぶりに改正され,海岸の「防護」だけでなく,海岸「環境」の整備や保全,海岸の適正な「利用」が目的に追加されました.

2011年3月11日に発生したマグニチュード9.0の東北地方太平洋沖地震に伴う津波は,わが国に未曾有の災害をもたらしました.これを受けて海岸法が改正され,2段階レベルの津波外力の設定が提唱され,設計外力を超える浸水し対し,構造物は粘り強くあるべきという考え方が導入されました.また近い将来,南海トラフ巨大地震が高い確率で発生すると危惧されており,内閣府中央防災会議は津波想定を見直し,公表しました.人的・資産被害を最小限にするためにも,ハード対策である海岸構造物の機能向上やソフト対策である避難場所確保や避難誘導など,効果的な津波対策の確立が急務です.これまでの津波研究にとらわれない新しい視点から,今後の津波対策に役立つ研究が求められています.

一方で,地球温暖化の影響により,熱帯における海面水温が上昇し,1970年頃から北西太平洋の強い熱帯低気圧(台風)の強度が増しています.顕在化しつつある海面上昇や台風の強大化への適応も,海岸工学に求められる課題になっています.2015年に水防法が改正され,気候変動を踏まえて想定し得る最大クラスの洪水・内水・高潮への対応が規定されました.

研究目的

当研究室では,安全・安心な海岸防護を目指して,津波や高潮などの水災害からいかに人的・資産被害を軽減するかについて研究し,さらに,地球温暖化による気象の極端化と,それに伴う水災害の激甚化に対して効果的な適応策を提唱していきたいと考えています.