大学院のすゝめ

葦 -大学と家庭の心のかけ橋- 2017春号No.166 P.36

先生の声 環境都市工学部准教授 安田誠宏

昨年の4月に、縁あって母校の関西大学に教員として戻ってくることができました。母校に錦を飾るという表現は大げさかもしれませんが、学生達に「君達と同じこの学科のOBだよ」と言えるのを嬉しく思っています。学部生・院生時代の6年間を過ごした千里山キャンパスに再び通うようになり、懐かしさを感じつつも、様変わりした関大前通りの店々を見て、時の流れをしみじみと感じているところです。

私もそうだったのですが、大学教員や研究者になる進路をイメージしている学生は稀だと思います。小中高の教員には、教員免許を取って、教員採用試験を受ければなれると知っているのに、なぜか大学教員にどうすればなれるかは知られていないのが実情です。そういう未知の選択肢に出会う機会を逃さないためにも、まずは大学院に進むことをお薦めします。

関大土木OBの力なのか、震災復興や東京オリンピックの影響なのか、昨今の土木建設業界の就職事情は好調で、反対に大学院進学率が大きく低下しています。せっかく理系の道を選んだのだから、大学院で知識を深めてから社会に出て欲しいので、現状の進学率の低さを残念に思っています。

大学院では、知識を得るだけでなく、研究を通じて、課題を分析し、アプローチ方法や解決策を考え、計画を立てて実行する、上手く行かなければ対案を考え、試行錯誤しながら課題を解決していき、達成感を得る、という一連のプロセスを学び、自ら考え行動する力を身に付けられると考えています。また、人に自分の考えを表現して伝えるプレゼンテーション能力や、議論する力も身に付きます。4回生の時はやや頼りなかった学生が、院修了時には見違えるほど成長するのを幾度も見てきました。長い人生の中で、修士の2年間は決して無駄になりません。大学院進学を、進路の選択肢に入れてくれることを切に願います。